マレーシアで働くことを考えているなら、雇用市場と情勢を知っておくことが大切です。移民法は厳しく管理されていて、当局も入国許可を出す人物の選定は注意深く行っています。マレーシア人のほとんどはしっかりと教育を受けており、複数の現地の言葉を流暢に操ることができるので、マレーシア国籍の人が優先的に選ばれます。そのため、現地の企業も、国際企業も、外国人を雇う正当な理由を複数証明し、必要承認を取得しなければなりません。
けれども、それを理由にマレーシアで働くことをあきらめないでください。急速な発展の過程にある部門では、外国からの人材が重要な役割を果たしてくれています。
雇用パスを取得する
文化や知識人の多様性という観点で、外国人労働者はマレーシアにとって重要な人材となる可能性を秘めています。特に国際市場で展開している企業の場合、在マレーシア外国人の経験や技能資格はとても貴重です。また、多くの国際企業が外国人の雇用を頻繁に行っています。
外国人労働者の雇用を望むマレーシアの企業は、決まった条件をクリアしなくてはいけません。まずは、 外国人サービス部門(Expatriate Services Division :ESD)登録しなければなりません。手続きにかかる日数は14営業日です。登録が認められたら、外国人委員会か、関連当局から外国人を雇用するための許可をもらう手続きを始めることができます。その際、関連部門機関からの推薦状の取得も必要になります。そうしてようやく、雇用パスの申し込み書を提出することができるようになります。
在マレーシア外国人は自分たちで雇用パスを申請することはできません。また、雇用パスの資格をもらうには、それぞれが決まった条件をクリアしていなければなりません。マレーシアにある外国籍企業の経営管理者トップか、必要経験と資格を満たした重役ポスト、または必須技能知識を兼ね備えた優秀な技術者のいずれかでなければいけません。こういったポストに就くことのできる外国人は、最低でもその職種に関連した学位を持っていること、アジアでの職務経験があることが求められることが多いです。収入は、最低でも月額5,000リンギット(約13万円)、契約は最低2年がが義務付けられています。月額8,000リンギット(約20万円)以上の収入が見込める外国人は、企業側が必要書類をきちんと出してさえいれば、自動的にパスは発行されます。
企業側もまた、決まった条件を満たしていなくてはなりません。マレーシア会社登録委員会か、マレーシア社会団体登録局、または、マレーシアの法律に基づいて登録されている協力組合に登録する必要があります。また、払込資本金の必要条件を満たしていること、そして、企業の外資が少なくとも50万リンギット(約1,360万円)でなければいけません。
さらに企業は、諸外国からスキルのある労働者を雇用するためのポストが空いているということを、移民局に認めてもらう必要があります。
将来性の高い部門
2015年のマレーシア経済の36.3%を担っていたのが中小企業(SMEs)です。また、中小企業の成長は一貫してマレーシア全体のGDPの成長率を上回っています。
国内取引消費者関係省によると、中小企業部門はマレーシアで最大の雇用企業となっており、2015年の全雇用の65.5%を占めているとのことです。政府も中小企業が経済の重要な要素であることを認識しているため、中小企業の発展のためのサポートに力を注いでいます。中小企業の90%以上がサービス業部門で、製造部門は6%にとどまっています。
マレーシアの輸出市場で強いのは電子・電気機器などの工業製品です。また、石油や天然ガスもアジア太平洋地域で主要な輸出品目の一部となっています。
マレーシアの医療部門は大きく成長しており、国連開発プログラムの「その他の発展途上国のモデル」としてマレーシアが支持されています。2010年には経済変革プログラム(Economic Transformation Programme :ETP)が設立されました。2020年までにマレーシアを高所得経済国に変革することを目指しています。こういった主導のもと、医療部門は12ある国家重点経済分野の一つとされています。その他の分野は次のようになります:通信技術およびインフラ・パームオイル・卸売りおよび小売業・石油、ガスおよびエネルギー・ファイナンシャルサービス・ビジネスサービス・電子および電気・教育・農業・観光業。政府の前向きな姿勢は、新たな市場の確立につながっています。同様に、外国からの人材を求めるこれらの部門では新たなビジネスのチャンスが生まれています。
マレーシア移民局のホームページでは、外国人が就くことの許されていない職種のリストを見ることができます。(ハイパーリンク)
労働条件
1955年雇用法では、マレーシアでの一週間の労働時間を最大48時間としていました。けれども、法律に反して労働時間を大幅に超過するマレーシア人が多いことが指摘されています。勤続12か月の新規従業員は、8日間の年次有給休暇の資格を得ることができます。また、同じ企業で2年以上勤務すると、その日数は12日まで延長されます。
女性従業員については、出産前の最低4か月前まで勤務すると、60日の産休を得ることができます。
また、新規従業員は年間合計14日の病欠が認められますが、従業員が医療費の支払いを行い、指名した企業の登録医が必要と判断した場合に限ります。
最低定年退職年齢法が2013年7月に施行されたため、現在では民間部門の従業員の定年退職年齢は、60歳となっています。
社会保障
マレーシアには現在2種類の社会保障があり、社会保障機構が運営しています。PFRKESOとして知られる同機構は、雇用者と被雇用者から毎月受け取る保険料をもとに基金を作り、事故や病気の際に社会保障給付を支払います。労働保証制度は、雇用により生じたケガや職業病で苦しむ従業員の保障を提供します。一方、疾病年金制度は、雇用との関係性に関わらず生じた疾病や、死によって苦しむ従業員へ保障を提供します。60歳に到達していない従業員は毎月給料の0.5%、雇用者は1.75%が保険金として徴収されます。
さらに、被雇用者退職積立基金が設立されており、民間部門や無年金の公的機関で働く人々の退職金の支給を行っています。
マレーシアで合法に雇われている外国人は支払いの義務はありませんが、EPFへの支払いは選択が可能です。
外国人は毎月5,000リンギットの賃金を受け取ることが義務付けられているため、60歳に到達していな場合、雇用者の支払率は給料の12%、従業員は最近削減され、8%となっています。外国人としては、55歳になったら預金をすべて引き出し、外国銀行為替手形で母国に送金すると良いでしょう。
外国人労働者の入院および手術に関する保障制度(FWHS)もまた必要とされています。雇用パスが発行される前の18歳から59歳までの外国人が対象です。これは1年ごとに更新するタイプの保険制度で、外国人労働者の入院による経済負担を減らすことが目的とされています。